罪と祈り(貫井徳郎)読了

先週末に貫井徳郎の最新作を読了しましたので、感想を書かせてもらいます。

話の内容の前に、これは映画でみてみたい!というのが第一の感想です。

西浅草を舞台にしていて、30年前と現在がリンクしているというストーリーは映画にもってこいだと思います。2年前には「愚行録」が映画化されていますし、あれ以上に映画に向いているのではないかと思います。今回のポイントである叙述トリック(いつもの作品に比べれば驚きは小さいが)をどう表現するか、というのはありますが。

 

隅田川で発見された父の遺体から話が始まり、章ごとに、現代の親友二人(亮輔と賢剛)、それぞれの父(辰司と智士)のストーリが進んでいくという形。

辰司の死が自殺ではない、というところからなぜ死に至ったのか、父の周辺を息子の亮輔が調べていくと(警察官である賢剛も並行して捜査)、過去の驚くべき事実に突き当たる、という流れ。

小説としてはさすがの文章でいつもの通り引き込まれてあっという間に読めたという評価をしつつ、前述の通り驚きは少ないこと(読者の裏をかくという意味)、ストーリーにやや無理がある点(これは他の方も感想で書いていましたが)で推理小説としてはやや評価が難しいかなという意見です。

でも、元号が令和に変わった年に、30年前の平成改元の時の情景を出してくるのは、今回との対比も踏まえ、当時を小学6年生で体験した身としては、なんとなく感慨深いものがありました。確かに自粛ムードは強くて、芸能人の結婚式の延期のニュースがあったり身近では商店会のクリスマスパーティがなくなったけど、外はそこまで暗かったかな(笑)

 

貫井さんはこれで書くのをやめるとかいわずに、まだまだ世に作品を出してほしいというのが私の切なる希望です。私にとっては、最新刊が出たら絶対に買う、唯一の作家ですので。